広島大学大学院 医系科学研究科 外科学

  • 標準
  • 最大

わたしたちについて

  1. HOME
  2. わたしたちについて
  3. 診療部門 Clinical
  4. 肝胆膵外科
  5. 胆膵外科について
  6. ④当科の胆道癌の治療

④当科の胆道癌の治療

 
 <胆道癌(胆管癌)の治療について
 
 
 最初に胆道についての説明を追加します。
 
胆道は肝臓でつくられた胆汁の通路です。川の流れのようにとらえ最も上流は肝内胆管です。肝臓内を木の枝のように多数の胆管が複雑に肝内を走行しています。
 胆管は肝臓の外にでると一本の管に集められます。これを肝外胆管と呼びます。
 肝外胆管の途中に胆嚢が合流しています。胆嚢は胆汁を貯めておく袋です。
 肝外胆管は下流で膵臓内を走行し、最後に出口の十二指腸乳頭部で十二指腸内に胆汁を分泌し、食物と胆汁が混じります。
 
 これら肝内胆管肝外胆管胆嚢十二指腸乳頭部を総称して「胆道」と言います。
 
 
 
 
 <胆道癌(胆管癌)について
 
 
 
 前述のとおり胆道は場所によって名前が異なるため、それぞれの場所にできた癌の
名称も異なります(上図)。
 
・肝内胆管の癌:肝内胆管癌
・肝外胆管の癌:肝外胆管癌
  肝外胆管癌は上流の肝門部領域胆管癌下流の遠位胆管癌に分けられます
・胆嚢の癌:胆嚢癌
・十二指腸乳頭部の癌:十二指腸乳頭部癌
 
胆道癌」はこれら5つの癌の総称です。
 
 
 
 
 <切除可能胆道癌の治療
 
 日本で行われた多施設の共同研究(ASCOT試験)の結果、切除可能胆道癌において手術後に抗がん剤治療(術後補助化学療法)を行うことによって生存期間が長くなることが報告されています1)。まず手術を行い、術後回復した後に術後補助化学療法(S-1内服)を6か月間行います。
 当科はASCOT試験の10年以上前から伝統的にGemcitabineとS-1併用による補助化学療法を行っており、その良好な結果を報告してきました2)。
 
 1) Lancet. 2023;401;195-203
 2) Murakami Y, Uemura K. Ann Surg. 2009;250.950-6. 
 
 
 
 
 <胆道癌の手術
 胆道癌は癌の部位によって必要な手術が異なります
 
肝内胆管癌に対しては肝切除術
遠位胆管癌十二指腸乳頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除
・胆嚢癌に対しては癌の広がりによって胆嚢摘出を含むさまざまな手術
・胆道癌で最も複雑な手術は、肝門部胆管癌や一部の肝内胆管癌、胆嚢癌に対し施行する大量肝切除、肝外胆管切除・再建です。しばしば肝動脈や門脈などの重要血管合併切除・再建も必要になり、腹部手術の中で最高難度の手術です。
 
 
 
 
 <最高難度の肝門部領域胆管癌の手術
 
 大量肝切除、肝外胆管切除・胆管再建、血管(肝動脈、門脈)合併切除・再建
 
 肝門部領域胆管癌は癌周囲の胆管(下図緑)肝動脈(下図赤)門脈(下図青)の3つの構造物が複雑に絡み合っており、その解剖も個々人によって異なりきわめて複雑です。
 
 手術前に胆管内の腫瘍の広がりと、肝動脈や門脈といった重要血管と腫瘍の位置関係・浸潤の有無を正確に判断し手術に臨む必要があります。その為、われわれは1-2mmスライスのCT画像を詳しく検討し術前に必ず、シェーマ(下図)を作成し充分なシミュレーションを行うことにより極めて複雑かつ難易度の高い手術を安全に行っています。
 
 切除前のシェーマ
 
 
 切除後のシェーマ
 
左図:肝右葉・尾状葉切除、肝外胆管切除、胆道再建
右図:肝左三区域・尾状葉切除、肝外胆管切除、胆道再建、門脈合併切除・再建
 
 
 
 
 <肝門部領域胆管癌に対する手術を安全に行うための取り組み
 
 
 肝門部領域胆管癌に対し安全に手術を行うため、前述の詳しい解剖理解・シェーマ作成以外に胆道癌診療ガイドラインで推奨されている、CTを用いた正確な肝機能評価や門脈塞栓術を行っています。
 特にわれわれは、大量肝切除後の肝不全を予防するためにアシアロシンチグラフィーを用いた肝機能評価を積極的に取り入れ、従来の肝機能評価では手術困難と判断されたかたにも積極的に手術を行っています。1),2)
 
 1) Sumiyoshi T, et al. Radiology 2014;273:444-451.
 2) Sumiyoshi T, et al. Surgery 2016;160:118-126.
 
 
 
 
 <切除不能進行胆道癌 (胆管癌)の治療
 切除不能と診断された胆道癌に対しても、化学療法を行い腫瘍縮小認めた場合、手術による根治をめざします。
 
 下図は切除不能進行肝内胆管癌に対し化学療法を行い、腫瘍を小さくしておいて根治手術施行したかたです。肝門に広範囲に広がる肝内胆管癌(下左図:黄矢頭)で切除のためには肝臓の80%切除が必要であり、また血管(門脈)にも広範囲に癌が浸潤しており、手術術困難と診断。化学療法を行ったところ腫瘍の著明な縮小を認め切除可能と判断し、門脈塞栓後に肝左三区域・尾状葉切除、肝外胆管切除・再建、門脈合併切除・再建施行し問題なく退院されています。