第一外科について

  1. ホーム
  2. 第一外科について
  3. 研究部門 Research
  4. 【肝胆膵外科】膵癌における傍大動脈リンパ節micrometastasisの予後への影響について

【肝胆膵外科】膵癌における傍大動脈リンパ節micrometastasisの予後への影響について 

 

 膵癌では、切除可能であった場合でも、80~90%と高率に膵臓周囲のリンパ節、時に、腹部大動脈周囲などの遠隔リンパ節に転移を認めます。
 

 膵癌のリンパ節への転移、進展は、腫瘍の場所により異なります。腫瘍が、膵頭部領域にある場合、最も高頻度に転移を認めるのは、膵頭部のすぐ近傍のリンパ節です。次に、上腸間膜動脈や総肝動脈などの2群といわれる少し離れた部位のリンパ節で、さらに離れた腹部大動脈周囲にもリンパ節転移を認める場合があります。膵体尾部にある腫瘍の場合、脾動脈周囲リンパ節、上腸間膜動脈周囲リンパ節、総肝動脈周囲リンパ節、大動脈周囲リンパ節等に転移を認めます。
 

 外科的に切除可能な場合は、膵癌と一括して転移リンパ節を切除します。切除が不可能な場合は、化学療法、または、放射線化学療法(Gemcitabine等)を施行します。

 

 

1.研究背景

 

 第一外科 肝胆膵外科グループの検討では、膵癌におけるリンパ節転移、特に、腹部大動脈周囲の傍大動脈リンパ節と呼ばれる遠隔リンパ節への転移は、予後が不良な要因であることが分かっています。

 

 隣接転移は、リンパ流に沿ってある程度の腫瘍量を形成しながら、順番に進展。転移していきます。しかし、顕微鏡で検出されるような、腫瘍量のごく少量の微小なリンパ節転移(micrometastases)を認めることもあり、その意義については、いまだはっきりと分かっていません。

 

komo_Figure.1.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           膵癌術後の累積生存率

  膵切除時に合併切除したリンパ節に転移を認めた場合(N+)、

  リンパ節転移がない場合(N-)と比較し、予後は不良です。

  特に、腹部大動脈周囲(Para A-N+)に転移を認めた場合は、

  更に予後は不良となります。

 

 

2.研究方法

 

 研究の方法は、第一外科 肝胆膵外科グループにおいて、2002年5月から2014年3月までに傍大動脈リンパ節郭清を伴う膵癌に対する膵根治切除術を施行した 195例 を対象としました。

 

 評価方法: 

 郭清した傍大動脈リンパ節をHE染色し、転移陰性であると評価された症例について、免疫組織化学染色 (CAM 5.2) で微小転移(micrometastases)の有無を評価。

 

 傍大動脈リンパ節の転移形式を、転移なし(no metastasis群)、微小転移あり(micrometastasis群)、リンパ節転移あり(HE-positive群)の3群に分類し、累積生存率(overall survival , OS) との関係について検討した。

 本研究においては、リンパ節micrometastasisは、HE染色では検出されず、免疫組織化学染色で初めて検出されたsingle tumor cellあるいはcluster of tumor cellsを含むリンパ節転移であると定義した。 

 

 

3.結果

 

 転移なし(no metastasis群)は159例、微小転移あり(micrometastasis群)は17例 (single tumor cell : 4例、cluster of tumor cells : 13例)、リンパ節転移あり(HE-positive群)は19例。 

 

komo_Figure.2.png 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この3群と、累積生存率(OS)の関係について単変量解析を行ったところ、微小転移あり(micrometastasis群)(p=0.002)とリンパ節転移あり(HE-positive群)(p=0.003)は転移なし(no metastasis群)と比較して有意に予後不良であった。

 しかし、微小転移あり(micrometastasis群)とリンパ節転移あり(HE-positive群)の累積生存率(OS)には有意な差は認めなかった(p=0.719)。

 

 多変量解析では、門脈・上腸間膜静脈切除 (HR, 1.93; p = 0.002)、術後化学療法 (HR, 2.39; p < 0.001)、微小転移あり(micrometastasis )(HR, 2.92; p = 0.003)、リンパ節転移あり(HE-positive群)(HR, 1.82; p = 0.036) が独立した予後因子となった。 

 

 

komo_Figure.3.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.結論

 

 

 膵癌における傍大動脈リンパ節への微小転移(micrometastasis)は、リンパ節転移陽性症例(HE-positive)と同様に、予後不良因子であった。

 

引用文献

  1. Murakami Y, Uemura K, Sudo T, et al. Prognostic Impact of Para-aortic Lymph Node Metastasis in Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. World J Surg. 2010;34:1900-1907.
  2. Murakami Y, Uemura K, Sudo T, et al. Number of metastatic lymph nodes, but not lymph node ratio, is an independent prognostic factor after resection of pancreatic carcinoma. J Am Coll Surg. 2010;211:196-204.