【胆道の病気】胆道がんについて
胆道とは?
胆道とは、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に至るまでの通り道のことで、胆管と胆嚢からなります。
・胆管は胆汁が通る管で、肝臓内の無数の細い胆管が川の流れのように集まって、肝臓の外に出る時は左右の2本になり、すぐに1本となって十二指腸につながっています。
・胆嚢は肝臓にぶら下がっていて胆汁を一時的に貯めておく袋です。
※日本消化器外科学会HPより引用
胆道がんについて
胆道がんは、上記に示した胆道に発生するがんであり、胆管がん(肝内胆管がん、肝外胆管がん)、胆嚢がん、乳頭部がんに分類されます。本邦ではがんの死因の6位にあたり、近年増加しているがんの 一つです。
・肝内胆管がん:肝内胆管がん(胆管細胞がんとも呼ばれます。)とは、肝臓内にある胆管にできたがんのことです。胆管上皮から発生する悪性腫瘍のうち肝内に発生するものを指します。現在日本では、原発性肝がん取扱い規約に基づいて扱われており、原発性肝がんのうち、3~7%を占めます。
・肝外胆管がん:肝外胆管の長さは約8センチで、肝臓に近い部分から肝門部(上部)胆管・中部胆管・下部胆管に分けられ、がんが存在する場所によって、肝門部胆管がん、上・中・下部胆管がんと呼ばれます。 また、拡張型の膵・胆管合流異常は胆管がんのリスクファクターと考えられています。
・胆嚢がん:胆嚢にできるがんです。年齢は60歳台が最も多く、やや女性に多いがんです。胆嚢がんに胆石の合併する頻度は50-60%です。一方、胆石症に胆嚢がんが合併する頻度は2-3%と低率ですが、高齢者ではもっと頻度が高くなります。膵管胆管合流異常に合併する胆嚢がんが20-30%みられます。
・乳頭部がん:胆汁の通り道である総胆管と膵液の通り道である主膵管が、十二指腸壁を貫き十二指腸内腔へ開口する部位を十二指腸乳頭部(ファーター乳頭)と呼び、ここに発生する悪性腫瘍のことです。
胆道がんの症状
・胆管がん:胆管がんの初発症状は90 %が黄疸といわれています。その他、掻痒感,軽度の上腹部痛,体重減少などが半数以上の症例で認められます。 黄疸を伴わない症例では腹痛・発熱・食思不振・全身倦怠感などが初発症状として認められるといわれていますが,無症状症例が27 %であったとする報告もあります。
・胆嚢がん:最も多い臨床症状は右上腹部痛で79~89 %に認められます。その他,悪心嘔吐、体重減少,黄疸,食思不振,腹部膨満感,掻痒感,黒色便などが上げられます。一方,無症状で発見された症例は32~38 %とする報告があり,その場合の発見動機として,検診時の異常,他疾患治療時の全身検索などがあげられます。
・乳頭部がん:臨床症状としては黄疸,発熱,腹痛が多く,ついで全身倦怠感,体重減少,食思不振,背部痛などがあります。黄疸は72~90 % に認められると報告されており,黄疸が変動することもあるのが特徴です。その他、発熱や腹痛は約3割の症例に見られるとの報告もあります。
胆道がんに対する検査は?
1) 血液生化学検査
胆管閉塞例では肝機能障害(ALP,G-GTP,BIL などの上昇)を認めますが,胆道がんに特異的な血液生化学検査はありません。
2) 腹部超音波検査
胆道がんを疑った場合に、最も簡便で、最初に行う画像診断です。特に,肝内の拡張した胆管を描出することは容易であり,閉塞部位を推定することが可能となります。胆嚢がんでは50 % 以上が腫瘍として描出されます。
3) 腫瘍マーカー
胆道がんに特異的な腫瘍マーカーはありませんが、CA19-9は 60~70 %、CEAは40~60 %の胆道がん患者で上昇するといわれています。
4) CT
multi-detector CT(MDCT)の発達により,詳細な胆道の詳細な構造の評価が可能であり主占居部位の診断に必須の検査になります。さらにMDCTによる血管浸潤診断は,治療方針の決定の上で重要な要素となります。
5) MRI/MRCP(MR胆管膵管撮影)検査,ERCP,PTC
MRCPは,胆管の狭窄部位の同定や進展度の診断,膵・胆管合流異常の有無の確認に有用な検査となります。
6) 内視鏡下胆管造影検査(ERC)・経皮的胆管造影検査(PTC)
・内視鏡的逆行性胆管造影(ERC):口から内視鏡を入れて、乳頭部から胆管内に挿入されたチューブを利用し、胆汁の流れを維持する、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)があります。ERCの経路を利用し、胆道ステントを留置して内ろう化することも可能です。また、鼻から胆汁を体外へ出す内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)もあります。
・経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD):経皮経肝胆道造影(PTC)の検査で、皮膚から肝臓に挿入されたチューブを利用し、肝臓内で拡張している胆管から胆汁を体外へ排出します。この経路を利用し、胆道ステントを留置して内ろう化することも可能です。
※ERBDやPTBDからは、胆汁中の細胞や腫瘍の一部を採取しそれを顕微鏡で調べることも可能です。
7) 胆道鏡
直接胆管の中に細いファイバースコープを通し、造影剤を直接注入してX線撮影する検査です。胆管の粘膜内進展範囲の診断に有用で、粘膜から小さな組織片を採取し、腫瘍の広がりをより詳しく調べることもできます。
・経口胆道鏡(POCS)
内視鏡を口から十二指腸まで挿入する内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)の経路を使用します。
・経皮経肝胆道鏡(PTCS)
皮膚からチューブを挿入する経皮経肝胆道造影(PTC)の経路を使用します。
8) PET
PET検査は、放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出する検査です。最近ではCTを併用したPET-CT検査が普及しています。リンパ節転移や遠隔転移の診断に優れています。
切除可能胆道がんの治療(当科の治療方針)
治癒切除が可能と判断された場合、手術を行います。
胆道がんに対する手術術式は、腫瘍の局在により、いろいろな手術術式が選択されます。
・肝門部胆管がんと上部胆管がんでは、多くの場合、肝臓の左右どちらか半分またはそれ以上を切除する術式を行っています。
・中部胆管がんでは肝外胆管切除から肝膵十二指腸切除までの様々な術式がありますが、多くの場合膵頭十二指腸切除を施行します。
・下部胆管がんでは、膵頭十二指腸切除が標準術式となっています。どの部位での胆管がんでも重要な血管と近接または浸潤している場合が多く、当院では積極的に血管合併切除・再建を行い、手術での根治切除を追及しています。
胆道がんの外科治療は、他の消化器がんの外科手術と比較しても、合併症の多い外科治療です。当グループでは、消化器内科や放射線科との連携に加え、栄養管理、リハビリテーション、口腔内ケアなど積極的に行いながら、入院から退院までの周術期管理をおこない、出来るだけ早く社会復帰できるように心がけています。
術後補助化学療法(当科の治療方針)
当科では術後は、全身状態の回復を待って、積極的に補助化学療法を行っています。(主にステージII以上の患者さんを対象としています。)
現時点では、胆道がんガイドラインにおいて、手術後補助化学療法については、「臨床試験として行われることが望まれる。(推奨度 C1)」と記載されていますが、私たちのグループの検討では、胆道がんに対する外科手術後、術後補助化学療法を施行することで、予後の改善を認めています。
切除不能胆道がんの治療
胆道がんにおいて、切除不能の進行がんや切除後の再発例には化学療法をメインに治療を行っています。
2015年現在、日本において保険診療で認められている胆道がんに対する化学療法薬は、以下の3つあります。これらの薬剤を単独または組み合わせて投与し、適切に治療を行っていきます。また、これらの化学療法薬以外の保険未収載の薬剤については、その有効性が証明されている場合、当院の倫理委員会の承認を経て、積極的に使用していく方針です。
胆道がんに対する化学療法
抗がん剤
1、ジェムザール(ゲムシタビン) (点滴)
2、ティーエスワン(S-1) (内服)
3、シスプラチン (点滴)