こどもの包茎はなるべく手術しない
はじめに
お子さんのおちんちんの問題は、特に母親にとっては未知の領域です。
包茎は小児外科の外来でも一番質問の多い病気になります。
お話を読んでもよく分からない場合は、受診の上ご相談ください。
1)包茎とは?
包茎には次の2種類があります。
・真性包茎‥包皮の先が狭く、皮をむいても亀頭が露出できない状態
・仮性包茎‥亀頭は包皮に包まれているが、これをむくと容易に亀頭が露出できる状態
このうち一般的に治療の対象となるのは、真性包茎です。
2)いつ治療が必要?
新生児で包皮の先端がむける子はほとんどいません(1-3%程度)。
しかし、年齢とともにむくことができる子の割合が増えていき、思春期を迎えることには9割以上の子が皮をむいて亀頭が露出できるようになります。
これには男性ホルモンの影響があるとされています。
したがって、思春期前の子供でおちんちんの皮がむけないのは異常ではありません。無理をしてむく必要や、お風呂でむいて洗わないといけない!なんてことはありません。
(写真:Treating phimosis. Med J Aust. 2003 Feb 17;178(4):148-50.より) |
しかし、子供のころにどうしても治療が必要な包茎の子もいます。
・包皮の先が狭すぎて針の穴のように小さく、おしっこをするたびにおちんちんの先の皮が風船みたいに膨らんでしまう(バルーニング)
・おしっこがまっすぐ飛ばず、横に飛んだりするため立っておしっこができない(尿線不定)
・おちんちんの先端がよく赤くなって痛がる(繰り返す包皮炎)
といった症状がある場合には積極的な治療の適応になります。
また、思春期が近くなってきたのにどうしてもむけなくて子供が悩んでいるという場合にも治療の適応になります。
3)軟膏による治療
以前(20年くらい前)までは包茎の治療は手術が基本でしたが、最近では軽いステロイド入りの軟膏が包皮を広げるのに効果があるのが分かってきました。
ステロイドが男性ホルモンに似た働きをするため、包皮の先端を広げ、亀頭と皮がひっついている部分をはがす効果があるとされています。
外用の軟膏なので体内にはほとんど吸収されないため、安全に比較的短期間(早い子では1-2週間程度)で包皮をむくことができるようになります。
しかし
・全員に効果があるわけではない
・しばらくしてまたむけなくなってしまうこともある
・清潔な手で軟膏を塗らないと、包皮炎になることがある
という点は注意が必要です。
4)手術による治療
軟膏治療を行ってもどうしても包皮を向くことができないお子さんや、症状が改善しないお子さんでは手術が必要になることもあります。
また、おちんちんの皮をむいた時に先っぽの狭かったところでおちんちんが締め付けられて、血の巡りが悪くなって痛がっているようなお子さん(嵌頓包茎)に対しては緊急手術が必要になることもあります。
手術には背面切開(おちんちんの皮の狭い部分を何か所か縦に切開し、横に縫合することで広げてあげる)という方法と、環状切開(包皮の狭い部分を全周大きく切り取って、常に亀頭が露出した状態にする)という方法の2種類があります。
小児では後の成長や整容性を考慮して背面切開を行うことがほとんどですが、患児の年齢や希望に応じて環状切開を選択する場合もあります。