【肝胆膵外科】胆管癌の個別化治療に向けて:TS-1及びGEM代謝関連酵素発現による化学療法感受性予測
1.研究テーマ
胆管癌の個別化治療に向けて:Gemcitabine(ジェムザール)およびS-1(TS-1)代謝関連酵素発現による化学療法感受性予測
2.研究背景
胆道癌は、外科的切除がもっとも根治的治療であるが、進行して発見される場合が多く、切除不能例も多い。また再発率も高いため膵癌と共に消化器癌の中で最も予後不良な難治癌であるといわれている。
そのため、生存率の向上のために術後補助化学療法に期待が持たれており、当科では2002年よりジェムシタビン(GEM)及びフッ化ピリミジン系抗癌剤であるTS-1の併用療法を導入し、良好な成績を報告している。しかし、化学療法の効果には個人差があり、「個別化治療」が重要と考える。
近年、様々な癌腫において蛋白や遺伝子解析から抗癌剤の感受性を推定する研究が行われており、我々は切除可能進行胆管癌に対してフッ化ピリミジン系及びGEMの代謝関連酵素の発現解析を行い、胆道癌における抗癌剤耐性機構について研究を行っている。
3.研究方法
フッ化ピリミジン系及びGEMの代謝関連酵素であるTS(thymidylate synthase), DPD (dihydropyrimidine dehydrogenase), OPRT (orotate phosphoribosyltransferase)及びhENT1(human equilibrative nucleoside transporter 1)の発現を免疫組織染色法にて検討を行った。胆管癌は手術可能症例が少ないが、当科では約20年で100例以上の貴重な進行胆管癌手術症例を経験しており、それらの組織標本を用いてTS,DPD,OPRT,hENT1発現を調べ、それぞれ高発現及び低発現の二群に分け生存率の違いを調べた。
4.結果
TS-1+GEM併用、術後補助化学療法施行群ではTS低発現群がTS高発現群に対して有意に、またhENT1高発現群はhENT1低発現群に対して有意に生存率が良好であった。また、TS低発現群、hENT1高発現群ではTS-1+GEM投与群の方が非投与群に対して生存率が良好だったが、TS高発現群、hENT1低発現群ではTS-1+GEM投与群と非投与群で生存率に差を認めなかった。このことから、術後にTS、hENT1発現を調べることで化学療法の有効性を予測することができる可能性があることが分かった。