広島大学大学院 医系科学研究科 外科学

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こどもの便秘症のお話

便秘症というとあまり子供の病気というイメージではないかもしれませんが、

実はいまや、小学生の3人に1人は便秘症であるといわれています。

成人とは違い、小児の便秘には小児特有の問題があるのです。

 

1.便秘症の定義

一般的に、1週間に3回以上の自然(自力)排便がない状態を便秘症といいます。

しかしこれはあくまでも目安。

毎日便が出ているようでも、ウサギの便のようなコロコロの便がちょっとだけ出ている状態はきれいな排便とは言えません。

便を出そうと思ってないときに便の液が漏れてしまう状態になっているときも、便秘症が原因になっていることがあります。

 

2.便秘になると何が悪い?

便秘症は小児期もしくは乳児期から始まってきます。

これを放置すると便秘はどんどん悪化します。

後で出てきますが、便秘をどんどんこじらせると、将来的に排便機能を育てることができないため、一生便秘で苦しんでしまうことになります。

また、排便習慣がしっかり身についていないと、精神的にも悪影響を及ぼすとされています。イライラや多動、学習障害の原因になったり、ひどい場合には家庭内暴力に発展したりすることもあります。

実際に便秘症をしっかり治療することで、それまで「落ち着きがない」と言われていた子が集中して物事に取り組むことができるようになることもあります。

 

3.排便機能のお話

PS13.1.jpg 

肛門の近くの大腸を直腸といいます。

普段この直腸にはあまり便がありませんが、

便が肛門近くに来ると腸の壁が引き延ばされ(青い矢印)

脳にその感覚が伝わることで便意を感じます。

すると便が漏れてはいけないので肛門の筋肉を締めて便を出すのをこらえます。

 

トイレにつくと、便を出すためにお腹に力をいれていきみ、肛門の筋肉は開きます。

この複雑な一連の機能を「排便機能」と呼びます。

この機能は実に複雑です。赤ちゃんの頃は全然育っていない排便機能が、オムツはずれに向けて次第に育っていき、小学校高学年になってやっと大人並みになるとされています。

つまり、子どもはまだ排便機能が未熟であり、大人並みにできないのは当たり前。

むしろ、しっかり排便機能が育つように助けてあげる必要があるのです。

PS13.2.jpg 

子供はよく便をこらえます。

便を出すのが怖い、痛い、気落ち悪い

漏らして怒られた記憶がある

遊びを優先させたい

トイレ(大便)に行くのを冷やかされた…

様々な原因で便をこらえると、次第に直腸には多くの便がたまった状態になり、

そうすると新しい便が上からやってきても、腸はあまり伸ばされなくなってしまい、便意を感じなくなるのです。

 

<遺糞症の子の注腸造影検査> 

 
PS13.3.jpg

これがずっとひどくなってしまうと、

おなかの中に便の塊ができてしまいます(遺糞症)。

こうなるともう肛門から自力で便を出すことはできません。

普段から便が漏れるようになり、溜まった便を出すには肛門から指を入れてかき出してあげるしかありません(摘便といいます)。

 

4.便秘症の治療

こどもの便秘の治療は、便秘がくせになってしまわないように、お薬を使って排便を助けてあげながら、こどもの排便機能がしっかり育ってくるまで気長に見守ってあげることです。

成人のように運動や、野菜などの食事療法、マッサージなども効果はありますが、どうしてもとくに小さなお子さんが相手だと難しいところがあります。

お子さんも、保護者の方も無理なく続けられる方法で治療を続けていけばいいと思います。

 

5.便秘症のお薬

便秘症のお薬は非常に多くあります。

外用薬としては、浣腸液や座薬

内服薬としては、刺激性下剤、緩下剤、整腸剤、漢方薬などがあります。

 

こどもに対しては、あまり刺激性下剤はお勧めできません。

また、すでに固い便がいっぱい溜まっているお子さんに、内服薬をたくさん飲ませても下に栓が詰まっている状態ですからきついだけです。

まずはしっかり浣腸治療を行って、便を出してから内服治療を考慮していくのがよい治療です。

 

お子さんの症状と好みに合わせながら治療を考えていきましょう。