【肝胆膵外科】膵臓手術後の膵臓内分泌機能評価~グルカゴン負荷試験による膵β細胞機能の測定~
研究の背景
膵切除後には膵外分泌機能の低下とともに、膵内分泌機能の低下も引き起こされ、術後に糖尿病を発症することがある。膵術後長期生存例の増加に伴い、外分泌機能の評価と同様に、内分泌機能に関しても正しく評価し、適切な加療を行っていく必要があると考えられる。
研究の方法
当科ではPD施行症例92例について術前または術後にグルカゴン負荷試験により膵内分泌機能を測定した。
グルカゴン負荷試験では、朝空腹時にグルカゴン1mgを静注し、グルカゴン静注前と静注6分後に採血を施行、グルカゴン負荷6分後のCペプチド値から空腹時のCペプチド値を引いたΔCペプチド値(ΔCPR)で評価を行った。
術前後の膵内分泌機能を比較し、さらに術後遠隔期の糖尿病発症の予測因子を検討するため、術前の膵内分泌機能を評価できており、かつ術後1年目まで経過観察可能であった92例中67例についてretrospectiveに検討を行った。
研究の結果
膵内分泌機能は術前ΔCPRが3.3 ± 3.7ng/ml、術後ΔCPRは1.4 ± 1.4ng/mlであり、術後有意に低下(P<0.001)を認めた(左図)。
ROC曲線を用いて術後DM発症をエンドポイントとした術前ΔCPRのROC曲線を作成すると、カットオフ値は1.9ng/mlでAUCは0.825、感度78.3%・特異度75.0%であった(右図)。
まとめ
膵切除術後には膵内分泌機能は低下を認め、また、膵切除術前後においてグルカゴン負荷試験で膵内分泌機能を評価することにより、術後遠隔期での糖尿病の発症を予測できる可能性があると考えられる。