【その他の膵腫瘍】その他の膵腫瘍について
【その他の膵腫瘍】Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)/漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)について
膵臓に発生する代表的な腫瘍は、「通常の膵癌」です。膵癌に次いで、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)・粘液産生膵腫瘍(MCN)をはじめとする膵嚢胞性腫瘍や膵神経内分泌腫瘍(P-NET)といわれる膵腫瘍も比較的よく知られています。
頻度は少ないですが、上記以外の膵腫瘍として、Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)・漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)があります。
これらの腫瘍は、頻度が少ないこともあり原因を含め詳細が良くわかっていません。小さいうちは、症状を来すことはなく、健康診断などの超音波検査、CT検査などで偶然に発見されることが大部分です。頻度は少ないですが、治療法が異なるため、他の膵腫瘍と正確な鑑別診断が大切です。
代表的な膵充実性腫瘍
- 「通常の膵癌」
- 膵神経内分泌腫瘍(P-NET)
代表的な膵嚢胞性腫瘍
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 粘液産生膵腫瘍(MCN)
鑑別の必要なその他の膵腫瘍
Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)
漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)
【その他の膵腫瘍】Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)・漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)の分類
Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)や漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)は、腫瘍の一部に嚢胞様の腫瘍成分を伴い、膵嚢胞性腫瘍の1つに分類されます。
膵嚢胞性腫瘍は、粘液産生の有無から大きく2つに分類できます。Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)や漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)は、粘液産生を認めない腫瘍です。一般的に、粘液産生を認めない腫瘍は、悪性例が少ないとされています。
粘液産生なし
- Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)
- 漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)
粘液産生あり
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 粘液産生膵腫瘍(MCN)
【その他の膵腫瘍】Solid pseudopapillary neoplasm(SPN)とは?
SPNは,膵非内分泌腫瘍の約1~2%と,比較的まれな腫瘍です。
当院でも年間数例、経験する頻度の少ない腫瘍です。20歳~30歳台の比較的若年の女性に多く、膵体尾部に発生しやすい膵腫瘍です。SPNに特徴的な症状はなく、健康診断での超音波検査やCT検査で、偶然見つかることが大部分です。
悪性度はそれほど高くありませんが、報告では、10%程度の悪性例があり、SPNと診断された場合外科手術をお勧めいたします。
腹部MRI検査/PDG-PET検査
左図:膵尾部に嚢胞部分とその近傍に充実性の腫瘍を認めます。 腫瘍の境界がはっきりした被膜を有する腫瘍性病変で、周囲に石灰化も認めたため、SPNと診断しました。
右図:PET検査では、膵尾部の腫瘍に一致してFDGの異常集積を認め(→)、SPNに特徴的な所見です。
【その他の膵腫瘍】漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)とは?
SCNは、基本的には良性腫瘍です。
全国集計では、SCNの悪性例の報告が数例ありますが、基本的には良性疾患で、診断ができれば経過を見てよい腫瘍です。しかし、他の嚢胞性腫瘍と鑑別が難しい場合があり、確定診断が得られず、診断に迷う場合には、外科切除をお勧めします。また、腫瘍の増大による圧迫症状や腫瘍内に出血したりすることがあり、その場合にも外科切除が治療となります。4cmを超えると悪性化しやすいという報告もあり、4cmを超えるような大きな腫瘍は手術を行っても良いと考えます。
腹部造影CT検査/MRI(MRCP)検査
膵体尾部に12cm大の多房性の嚢胞性腫瘍を認めます。主膵管との交通はなく、画像検査からSCNと診断しました。SCNは、良性の疾患で経過観察が可能ですが、周囲臓器への圧迫症状や腫瘍内への出血などの症状を認めた場合、外科治療の適応となります。
膵腫瘍全般に言えることですが、膵疾患の診断・治療方針の決定は、専門的な知識、技術が必要ですので、「膵腫瘍」が疑われたら、治療経験豊富な専門施設を受診することをお勧めします。