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【膵臓(すいぞう)の病気】膵癌(すいがん)について

 

 

 膵臓がんの治療は、第一外科 肝胆膵外科グループの最重要課題の1つです

 

 個々の患者さんに併せて、最新の治療方法を駆使して治療に取り組んでいます。

 

 診断のエキスパートである消化器内科、病理診断科、放射線科、その他、看護スタッフ、理学療法スタッフなど協力し合いながら、患者さんのベストの治療を提供いたします。周術期の栄養管理、リハビリテーションにも積極的に取り組んでいます。

 他科のエキスパートと協力し合い、集学的な治療を行うことで、膵癌治療成績の底上げに取り組んでいます。

 

 

 膵癌とは?

 

 膵癌の予後は非常に悪いことが知られています。

 膵癌の全体の5年生存率(5年間生存可能であると予想される患者さんの割合)は、残念ながら10%未満と報告されています。しかし、最近10年間で、膵癌治療は大きく進歩してきており、膵癌を治癒・克服するための光も見えてきています。

 

 膵癌と診断される患者さんの数は、毎年増加傾向で、2015年には年間罹患者数は3万5千人を超えると予想されています。

膵癌ステージ.jpg

 

 膵癌の予後が悪い原因は、いくつか報告されていますが、もともと生物学的に他の癌腫と比較して悪性度が高いことや、症状が出にくく早期発見が難しいこと、そして、外科的切除率が低いことが挙げられます。

 

 新規に膵癌と診断される患者さんのうち、およそ20%の患者さんは、切除可能膵癌といわれる外科治療が可能な病期に当たります。

 

 残りの80%の患者さんは、遠隔転移を認めたり、または、腹部の動脈や門脈に浸潤を認める局所進行の膵癌で、一般的には切除の対象外の病期に当たります。

 

   科学的根拠にもとづく膵癌診療ガイドライン2013年版

 

 

 膵癌に対する検査は?

 

 膵癌の疑いがある場合は、以下にあげる精密検査を受けていただくことをお勧めします。

 

 膵癌をはじめとする膵腫瘍性疾患の精密検査は、複数の画像検査、組織検査を併せて行い、総合的に判断し治療方針を決定いたします。

 膵癌の精密検査では、腫瘍の浸潤、リンパ節への転移の状態、肝や肺などの遠隔臓器への転移の有無など、進行度を正確に把握する必要があります。特に、腹部の動脈(上腸間膜動脈や総肝動脈など)や肝臓へ向かう静脈(門脈)の浸潤の評価は、治療法の決定にとても重要です。また、膵癌以外の膵腫瘍の中には、膵癌との鑑別が困難な症例もありますので、正確に鑑別診断することが重要です。

 

 ・CT検査 近年、multi-detector CT(MDCT)の発達により,数mm単位で膵臓の微細な構造まで検出できるようになり、必須の検査です。特に、造影剤を注射して撮影するCT検査(dynamic CT)では、膵腫瘍の大きさやひろがり、悪性所見などの有無を調べることが可能です。

 

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                    腹部造影CT検査

 切除可能膵癌のCT画像。膵頭部~膵体部に1cm大の腫瘍性病変を認めます(→)。遠隔転移を認めず、外科手術を行いました。

 

 ・MRI/MRCP(MR胆管膵管撮影)検査 造影剤を使用せずに、膵管や胆管を特に強調して描出することが可能です。また、多方向、様々な厚さの画像情報が得られ、ガイドラインでも、経過観察の際に施行すべき検査方法として位置付けられています。

 

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                 MRI/MRCP(MR胆管膵管撮影)検査

 膵頭部~体部癌に腫瘍による膵管の狭窄(→)を認めます。MRI/MRCP検査では、造影剤を使用せずに膵管、胆管を強調することが可能です。

 

 ・超音波内視鏡検査(EUS) 膵腫瘤の詳細な描出が可能で、カテーテルから組織を採取することも可能です。胃カメラの先端に超音波装置が装備されており、患者さんは内視鏡(胃カメラ)と同じ要領で、口からファイバーを内服していただきます。胃や十二指腸の壁を通して、腫瘍の性状を検査します。また、その他の部位の膵臓、胆管に異常がないかエコー検査を行います。場合によっては、腫瘍組織を一部採取したり、内容物を吸引したりすることも可能です。

 

  参考 超音波内視鏡検査(EUS) 説明文書

 

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                    超音波内視鏡検査(EUS)

 膵頭部~体部に1.5cm大の腫瘍性病変を認めます。EUS検査では、胃または十二指腸の壁を通してエコー検査をすることが可能で、非常に詳細に腫瘍の性状、大きさを評価することが可能です。また、内視鏡の先端からカテーテルを挿入し、エコーを使いながら腫瘍の針生検を行うことができることも特徴です。

 

 ・内視鏡下胆管膵管造影検査(ERCP) 膵癌の懸念がある場合、入院してさらに詳しい検査を行います。ERCPは、内視鏡を使って胆管・膵管を造影する検査です。口から十二指腸まで内視鏡(胃カメラ)を入れ、その先端から膵管・胆管の中にカテーテル(細い管)を挿入します。カテーテルから造影剤を入れて、膵管や胆管のX線写真をとります。ERCPにより、膵管、胆管を造影することで、狭窄の程度や圧排の有無を評価します。カテーテルを通して、膵液や胆汁を採取して細胞の悪性度の判定することも可能です。

 また、腫瘍による胆管への圧排・狭窄により閉塞性黄疸を認めた場合、カテーテルやステントを挿入し黄疸の治療を行います。

 

  参考 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)  説明文書

 

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                 内視鏡下胆管膵管造影検査(ERCP)

 膵頭部~体部の膵癌の患者さんです。膵管、胆管は、腫瘍により圧排、狭窄を認めます(→)。ERCPでは、カテーテルから、膵液や胆管を採取し細胞診を行います。胆管の狭窄により閉塞性黄疸がある場合など、胆管内にカテーテルやステントを挿入し、黄疸の治療を行うことが可能です。

 

 ・FDG-PET(陽電子放出断層撮影)検査 放射能を含む検査薬を点滴で人体に投与することで、全身の細胞のうち、がん細胞だけに取り込まれた放射線を特殊なカメラでとらえて画像化します。PET検査では、全身を一度に調べることができ、また、CTやMRIなどの形態の異常をとらえる検査に対し、PET検査では、ブドウ糖代謝などの機能から異常を検出します。がんの可能性が疑われながら他の検査で病巣が発見できない“原発不明癌”の診断や、がんの転移・再発を調べるのに有用な検査です。

 

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                FDG-PET(陽電子放出断層撮影)検査

 膵頭部~膵体部の腫瘍に一致して、FDGの異常な集積(赤い部分)を認め、悪性の可能性が高いことが分かります。膵臓以外の全身をスキャンすることが可能で、CTなどの検査で発見できない、小さながんの転移巣の有無を検査することが可能です。

 

 上記、画像検査のほかにも、糖尿病の有無、慢性膵炎の既往、アルコールの摂取、喫煙の有無、膵疾患の家族歴などのリスク因子は診断・治療の参考になります。

 

 

 切除可能膵癌の治療

 

 治癒切除が可能と判断された場合、膵切除を行います。

 

 膵癌に対する手術術式は、大きく分けて2通りの方法があります。

 腫瘍が膵頭部側にある場合は、膵頭部切除術を、膵体尾部側にある場合は、膵体尾部切除を行います。

 膵の外科手術は、他の消化器がんの外科手術と比較しても、合併症の多い外科治療です。当グループでは、入院から退院までの一連の流れを示したクリニカルパスを導入しており、出来るだけ早く社会復帰できるように心がけています。

 

 術後は、全身状態の回復を待って、補助化学療法を行います。

 膵癌診療ガイドライン2013に示されていますが、外科治療に加え術後化学療法を行うことにより、外科治療単独と比較し、予後は改善することが分かっています。

切除可能生存率.jpg

 

 当グループの検討でも、外科手術後、術後補助化学療法を施行することで、5年生存率は、15% → 41%、生存期間中央値(半分の患者さんが生存されている期間)は13ヶ月 → 44ヶ月と手術単独の治療と比較して、格段に治療成績が向上しています。

 

 手術手技の向上はもちろんのこと、栄養管理、リハビリテーション、口腔内ケアなど積極的に行うことで、患者さんの回復を促進しています。

 できるだけ早期に術後補助化学療法を開始していただき、さらなる治療成績の向上を目指しています。

 

 

  

 遠隔転移を伴う膵癌の治療

 

 膵癌と診断された約80%の患者さんは、遠隔転移を伴った、または、局所進行の膵癌で、一般的には切除の対象外の病期に当たります。治療のメインは、化学療法になります。

 

 2015年現在、日本において保険診療で認められている膵癌に対する化学療法薬は、以下の5つあります。

 投与方法、副作用の発現頻度、種類、程度などは薬剤によって異なります。

 

 これらの化学療法薬以外の保険未収載の薬剤については、その有効性が証明されている場合、当院の倫理委員会の承認を経て、積極的に使用していく方針です。

 

 膵癌に対する化学療法

 

  抗癌剤

   1、ジェムザール(ゲムシタビン)        (点滴)

   2、ティーエスワン(S-1)                  (内服)

   3、FORFIRINOX                               (点滴)

      5-FU、CPT11、Oxaliplatin

   4、アブラキサン(ナブパクリタキセル)(点滴)

 

  分子標的薬

   5、タルセバ(エルロチニブ)     (内服)      

 

 

 局所進行膵癌の治療

 

 局所進行膵癌に対する外科治療に積極的に取り組んでいます。

 

 局所進行膵癌について、外科治療を行っていた時代もありますが、手術先行の治療成績は必ずしも良いものでありませんでした。

 現在は、術前に化学療法を導入し腫瘍の縮小を図ったのちに、治癒切除が可能と判断した場合には、血管合併切除を併用した膵切除術に積極的に取り組んでいます。 

 

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                      局所進行癌 CT画像

 膵頭部に4cm大の腫瘍を認め、腹部の動脈(上腸間膜動脈、総肝動脈)への浸潤を認めました(左図)。局所進行癌の診断で化学療法を施行しました。化学療法後、腫瘍は縮小し(右図)、また、治療期間中に肝臓や肺への遠隔転移も認めなかったため、血管合併切除を伴う膵切除を行いました。

 局所進行膵癌は、一般的には、切除の適応外とされている膵癌ですが、集学的な治療により治癒切除可能な場合もあります。当科では、局所進行癌に対する外科治療に積極的に取り組んでいます。

 

 

 最後に

 

 膵癌は、人に発生する癌腫の中で予後が悪い癌の1つです。しかし、ここ10年間で、抗癌剤治療の発展、外科治療成績の向上などにより、膵癌を治癒・克服するための光が見えてきています。

 

 切除が可能な膵癌では、根治的な外科治療を行った後に、術後補助化学療法をはじめとする集学的な治療を行うことで、5年生存率は50%に近い数字まで向上しています。

 診断時、転移を認めたり、局所で浸潤し、外科治療の適応外となる切除不能の状態で見つかる患者さんもいます。遠隔転移を伴わない局所進行膵癌に対する治療は、現在、膵臓外科医が積極的に取り組んでいる課題の1つです。術前化学療法、血管合併切除を併用した外科手術を積極的に行い、その成果も認められるようになっています。

 遠隔転移を伴った膵癌の治療は、化学療法が治療のメインになりますが、現在、日本で保険収載されている5つの薬剤をうまく組み合わせて使用することで、治療成績は改善していくと思われます。今後、新薬を含め、さらなる治療法の開発が進むことが望まれます。

 

 膵癌の治療は、外科治療が唯一の治癒の治療とも言われます。しかし、手術だけでは根治は難しく、化学療法、放射線治療、栄養管理、理学療法、緩和ケアなど多方面からアプローチで膵癌の治療を行うことが大切です。

 

 膵癌の診断・治療方針の決定は、専門的な知識、技術が必要ですので、「膵腫瘍」が疑われたら、治療経験豊富な専門施設を受診することをお勧めします。