広島大学大学院 医系科学研究科 外科学

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【大腸肛門外科】排便機能外来について

 

【特殊外来】排便機能外来について

 

 当科では、火曜日、および木曜日の午後枠を中心に、排便に関する悩みに対応した特殊外来「排便機能外来」を実施しています。

 対象となるのは、便失禁、便秘といった便通異常、様々な直腸肛門疾患に伴う排便時のトラブルです。

 

 

排便機能外来診療の流れ

 

 はじめに詳しい問診を行います。恥ずかしさもあり話しにくいかもしれませんが、診断や治療を行う上で最も重要です。

 

 以下の項目をまとめておくと問診をスムーズに進めることができます。

  -毎日の排便回数,便の性状,排便に要する時間,便の出しやすさ

  -排便の異常はいつ頃からあるか

  -便失禁:便意が我慢できずに漏れてしまう,或いは知らないうちに便が漏れていた

  -便秘:腸の動きがゆっくりで排便回数が少ない,或いは直腸まで便が来ているのにうまく出せない

  -消化器疾患の既往歴,手術歴:がん,炎症性腸疾患,大腸憩室症,過敏性腸症候群,痔疾患など

  -出産歴(女性):分娩回数,時期,分娩方法,出産時の異常

  消化器疾患以外の既往歴:糖尿病や神経疾患,婦人科,泌尿器科疾患,精神疾患など

  -内服薬

 

必要に応じ、以下の検査を行います.

  大腸内視鏡検査

  直腸肛門機能検査:細い管を用いた肛門内圧検査でおしりを締める力を量り,と小さな風船を差し入れて

            膨らませることで直腸の知覚を検査します。

  超音波検査:肛門括約筋の損傷の有無を確認します。

  大腸通過時間検査:レントゲンに写る小さなマーカーを20個入れたカプセルを内服し,5日後にレントゲ

            で残っているマーカーの数から通過時間の遅延を判断します.

  排便造影検査(デフェコグラフィー):バリウムに小麦粉を混ぜた疑似便をお尻から注入し,検査室に準備

            した便座に座って排泄するもので,側方からレントゲンで連続撮影し,直腸・肛門の動

            きと疑似便の排出状態を確認します.

 

 

排便機能外来】治療方法

 

 すぐに手術を要する例を除き、食事・生活・排便習慣の確認と見直しから始めます。当院の栄養士による食事内容の確認、栄養指導を受けていただくこともできます。

 次いで、便秘、便失禁の状態に応じ、内服薬による便通コントロールを行います。また、骨盤底筋群の協調運動訓練、肛門括約筋の収縮訓練(バイオフィードバック)を続けることにより症状が改善する方もおられます。

 直腸脱(直腸が降りてきて,肛門から飛び出してくる状態)や痔疾患では各患者さんの状態に応じ、最適の手術治療を提案します。

 

 

排便機能外来便失禁に対する仙骨神経刺激療法(Sacral Neuromodulation: SNM)

 

 排便に関する神経(仙骨神経)に持続的に電気刺激を与え、便失禁の改善を図る治療方法で、2014年4月から本邦でも保険診療の中で実施することができるようになりました。

 

           haibenkinou1.jpg

 

 欧米ではおよそ20年前より施行され高い効果が得られており、本邦での臨床試験でも治療開始6ヶ月後、85%の患者さんで便失禁の頻度が半分以下に減少したと報告されています。

 当科では、週に2回以上便失禁の症状があり、様々な保存的治療が奏功しなかった患者さんに対し施行を検討しています。

 

 SNM治療の流れ

 約2週間の入院手術治療を行います。

 1回目の手術では仙骨神経に沿ってリード(刺激電極)を植え込みます。これを体外式の刺激装置(ポシェットに入れて持ち運べます)につなげ電気刺激の効果を確認します。

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 2回目の手術は、初回手術後10-14日ほど経過を観察し、効果を確認後行います。

 心臓のペースメーカーのような小型の刺激装置をおしりの軟らかい部分に植え込むものです。

 手術は全身麻酔で行い、1回目は2時間程度、2回目は30分ほどで終了します。植え込み後も患者さんの状態に合わせ、刺激方法や強度を調節することができます。

 残念ながら刺激効果が得られなかった場合はリードを取り除きますが、手術前の状態に戻るとお考えください。

 

 詳しい内容や副作用、施行できない場合、治療費用等についてはお気軽に担当医にご相談ください。

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                                          図3点 日本メロニック社提供