外科的心房細動手術
心房細動は外科手術でも治せる!
心房細動という不整脈は、心房がまったく不規則に脈打つ不整脈で、70歳以上の高齢者の10%に見られる頻度の高い不整脈です。
心臓内に血栓を造りやすくして脳梗塞を起こしたり、心臓の機能(収縮力など)を低下させて心不全を引き起こしたりすることが知られています。心房細動は、心臓弁膜症によく合併し、頻度が最も高い僧帽弁膜症手術では約70%に慢性心房細動を合併しています。
「心房細動の治療」には、お薬(薬物的治療)や手術(カテーテルアブレーション・ペースメーカー・外科手術)などがありますが、薬で心房細動を停止してこれを維持させられる(つまり、心房細動が起こらない状態を長く続ける)確率は電気ショック(直流除細動)を一緒に行ったとしても、あまり高くないため、カテーテルアブレーションや外科手術もよく行われます。
カテーテルアブレーションは、カテーテルで行われる治療であるため、体に負担の小さい手術といえますが、合併した心疾患(例えば弁膜症や狭心症・心筋梗塞など)がある場合にはよい適応となりません。
このため、こういった疾患を合併している患者さんには、外科的に心房細動を治す手術(一般的にメイズ手術といいます)が行われます。
メイズ手術やカテーテルアブレーションの原理は、心房上に心房細動を起こりにくくする電気的な隔離線を作成することで、通常この隔離線は特殊な装置を用いて高周波で作成されます。
広島大学第一外科では、メイズ手術の電気的隔離線の作成方法について、この手術の開発当初から研究を行っており、安全性や成績を向上させるために様々な工夫を行ってきました。
右記の図は、最も心臓への負担が少なくかつ成績の良い電気的隔離線の例で「広島大学方式」と呼ばれるものです。現在は、さらに術式の工夫がなされ、慢性化した心房細動でも90%以上の患者さんを治すことに成功しています。
術式の簡略化等については、我々が寄稿した記事が不整脈外科研究会のホームページにも詳しく述べていますので、こちらもご参照下さい。
●不整脈外科研究会ホームページはこちら http://arrhythm.umin.jp/treatment/surgery/simple.html
また、弁膜症に合併したメイズ手術については、下記の書籍にも詳しく述べてありますので、合わせてご参照下さい。