広島大学大学院 医系科学研究科 外科学

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膵がんについて詳しく知りたい方へ

 

膵がんの診断と治療について

 
膵がんの治療を考えるとき、「ステージはいくつなのか」だけで治療方法が決まるわけではありません。
膵がんが周囲の重要な血管にどの程度広がっているのか、肝臓や肺など他の臓器への転移がないか、手術を治療の中でどのように位置づけることができるのかを詳しく調べることが重要です。
 
そのため膵がんでは、手術を治療の中でどのように考えるかを示す切除可能性(せつじょかのうせい)という分類が治療方針を決めるうえで重要になります。
 
1.膵臓と膵がん
 
膵臓は胃の後ろ側にある細長い臓器です。
食べ物を消化するための膵液をつくる働きと、血糖を調節するインスリンなどのホルモンをつくる働きがあります。
一般に「膵がん」と呼ばれるものの多くは、膵臓の中を通る膵管から発生します。
膵臓の周囲には、体の大切な血管が数多く走っています。
そのため膵がんでは、がんの大きさだけではなく、がんが周囲の血管にどの程度接しているか、広がっているかを詳しく調べることが、治療方針を決めるうえで重要です。
 
【図1】膵臓と周囲の重要な解剖
 
 
膵臓図.png
 
膵臓は重要な血管に囲まれています。膵がんでは、がんとこれらの血管との関係が、手術を含めた治療方法を考えるうえで重要です。
 
 
2.膵がんはどのように診断するのか
 
膵がんでは、一つの検査だけで診断や治療方針を決めることはできません。
 
画像検査
 
造影CTやMRIなどを使って、がんの場所や大きさ、周囲の血管との関係、肝臓や肺など他の臓器への転移がないかを詳しく調べます。超音波内視鏡検査(EUS)なども行います。
特に手術を検討するときには、膵がんと周囲の重要な血管との関係を詳しく確認します。
 
病理検査
 
膵がんであることを確かめるために、がんの一部から細胞や組織を採取し、顕微鏡で調べます。
超音波内視鏡を使って組織を採取するEUS-TA(超音波内視鏡下組織採取)などの方法があります。
 
血液検査・腫瘍マーカー
 
CA19-9、DUPAN-2、CEAなどの腫瘍マーカーを血液検査で調べます。
これらの値だけで膵がんを診断することはできませんが、がんの状態を考えたり、治療がどの程度効いているかを判断したりするための大切な情報になります。
 
診断から治療へ5.png
 
 
3.膵がんでは「ステージ」だけで治療方法は決まりません
 
多くのがんでは、「ステージ」という言葉でがんの進み具合を表します。膵がんにもステージがあります。しかし、膵がんでは、治療前のCTやMRIだけでリンパ節にがんが転移しているかどうかを正確に判断することが難しい場合があります。
そのため、治療前の段階ではステージだけで治療方針を決めるのではなく、
 
他の臓器への転移がないか
がんが重要な血管にどの程度接しているか
手術でがんを取り除くことができると考えられるか
 
などを詳しく評価します。
 
 
そこで重要になるのが、「切除可能性」という考え方です。
 
切除可能性可能性とステージは何がちがうのでしょうか?
「ステージ分類」と「切除可能性分類」は異なる視点の分類です。


ステージと切除可能性分類.png
 
 
切除可能性分類.png
 
 
4.膵がんの治療を考える「切除可能性」
 
膵がんでは、手術を治療の中でどのように位置づけることができるかによって、大きく4つに分けて考えます。
 
 
膵がんの切除可能性分類(膵頭部がんの場合)
 
診断から治療へ6.png

膵がんの「切除可能性」とは

 

膵臓(すい臓)がんの治療方針を決めるうえで、まず大切なのが「手術で腫瘍を取りきれるかどうか」という判断です。これを「切除可能性」と呼びます。

CTやMRIなどの精密な画像検査で、腫瘍が膵臓のまわりを走る太い血管(動脈・静脈)にどの程度接しているか、そして肝臓や肺など離れた臓器への転移(遠隔転移)がないかを詳しく調べます。この結果によって、大きく4つに分類されます。

4つの分類

 

① 切除可能(せつじょかのう)

腫瘍が周囲の主要な動脈にまったく接していない、または静脈への接触があってもごくわずかな状態です。この場合は、比較的安全に手術で腫瘍を取りきれると判断されます。

 

② 切除可能境界(せつじょかのうきょうかい、ボーダーライン)

腫瘍が血管に一部接しているものの、手術による血管の合併切除・再建によって取りきれる可能性がある状態です。「境界」という言葉の通り、切除可能と局所進行の中間にあたります。

 

③ 局所進行(きょくしょしんこう)

腫瘍が血管に広く接触しており、現時点では手術で安全に取りきることが難しいと判断される状態です。ただし「局所進行=手術が一切できない」という意味ではなく、治療によって腫瘍が小さくなれば手術が可能になることもあります。遠隔転移はありません。

 

④ 転移(てんい、遠隔転移)

がんが肝臓・肺・腹膜など、膵臓から離れた臓器や部位まで広がっている状態です。膵がんと診断される方のうち、約半数以上がこの段階で見つかります。血管への接触の程度にかかわらず、遠隔転移が一つでも確認された場合はこの分類となり、手術による切除は治療の対象になりません。

 

この判断は、外科・腫瘍内科・放射線科など複数の専門医が集まる合同カンファレンス(集学的検討)で決定されます。

それぞれの治療の考え方

 

切除可能な場合

日本では、手術の前に抗がん剤治療(術前治療)を行ってから手術を行う方法が推奨されています。これは、ゲムシタビン+S-1という飲み薬と点滴を組み合わせた治療を2~3か月程度行ってから手術に進む方法で、手術を先に行う場合と比べて生存期間が延びることが国内の臨床試験で示されたことによります。手術後には、残った目に見えないがん細胞に対して、引き続き抗がん剤治療(術後補助療法)を行い、合計で約6か月間の薬物療法を行うのが一般的な流れです。 なお、欧米の一部のガイドラインでは、切除可能な段階では手術を先に行う方法が標準とされており、腫瘍が大きい・腫瘍マーカー(CA19-9)が非常に高い・リンパ節が大きく腫れているなど再発リスクが高い場合に限って術前治療が検討されるなど、国や施設によって考え方に違いがあります。当院では、基本方針として腫瘍マーカーの「CA19-9とDUPAN2による併用評価」により、術前治療を施行するか、手術を先行するかを決定しています。実際にどちらの方法を選ぶかは、担当する多職種チームでの検討により最終決定されます。

当院の治療方針の詳細については下記から

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切除可能境界の場合

先に薬物療法(抗がん剤、場合により放射線治療を併用)を行ってから手術を検討する「術前治療先行」が標準的な流れです。治療によって腫瘍が縮小し、血管への影響が軽減すれば、手術で取りきれる可能性が高まります。

当院の治療方針の詳細については下記から

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局所進行の場合

まず6か月程度の薬物療法を行い、腫瘍の反応を見ながら手術が可能かどうかを再評価します。反応が良好であれば、手術が検討されることもあります。このような手術はコンバージョン手術といわれています。痛みや消化管の通過障害などの症状が強い場合は、放射線治療を併用することもあります。当院での

当院の治療方針の詳細については下記から

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転移がある場合

治療の中心は、全身に効く薬物療法(抗がん剤)になります。目的は、がんの進行を抑えて症状を和らげ、できるだけ長く元気に過ごせるようにすることです。体力(全身状態)や遺伝子検査の結果に応じて、使用する薬の組み合わせが選ばれます。痛みや黄疸などの症状に対しては、緩和ケアを並行して行うことも大切な治療の一部です。ごくまれに、転移が少数・限局している場合には、当院では追加の局所治療が検討されることもあります。

当院の治療方針の詳細については下記から

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治療効果の確認方法

 

薬物療法を行っている間は、以下のような方法で効果を確認しながら、次の治療(手術に進むか、薬を変更するか)を判断します。

  • CTやMRIによる腫瘍の大きさの変化
  • 血液検査での腫瘍マーカー(CA19-9など)の変化
  • 必要に応じてPET検査による代謝の変化
  • 体調(痛み、食欲、体重、全身状態)の変化

ご家族に知っておいていただきたいこと

 

  • 「切除可能」という診断は、手術で完全に治せることを保証するものではありません。手術後も再発を防ぐための薬物療法が重要です。
  • 血管への合併切除が必要な手術は難易度が高く、経験豊富な専門施設(年間15~20件以上の膵切除を行う高度医療機関)での治療が推奨されます。
  • 治療方針は一度決まったら固定ではなく、検査結果や体調の変化に応じて、担当医療チームと相談しながら柔軟に見直されます。
 
 
5.「切除可能」=「すぐに手術」ではありません
 
「手術ができる」と言われると、できるだけ早く手術した方がよいと思われるかもしれません。
しかし、膵がんでは手術が可能な場合でも、すぐに手術をするとは限りません。
がんの状態を詳しく評価し、手術前に薬物療法を行ってから手術を行うことがあります。
大切なのは、手術ができるかどうかだけではなく、「いつ手術するのがよいか」を考えることです。
 
→ 「手術ができる」と言われた方へ
 
 
6.「切除可能境界(BR)」とは
 
切除可能境界(BR)は、膵がんが周囲の重要な血管に接しているなど、手術は検討できるものの、そのまま手術するのではなく、治療の順序を慎重に考える必要がある状態です。
多くの場合、まず薬物療法などを行い、その効果を確認してから手術を検討します。
血管との位置関係によって、静脈が問題となるBR-PVと、動脈が問題となるBR-Aなどに分けられます。
「手術ができるか」だけではなく、「どのような治療を行ってから、いつ手術するか」が重要です。
 
→ 「切除可能境界膵がん」と言われた方へ
 
 
7.最初に「手術が難しい」と言われても
 
膵がんが周囲の重要な血管に広く及んでいる場合、他の臓器への転移がなくても、診断された時点では手術が難しいと判断されることがあります。
これを「切除不能・局所進行膵がん(UR-LA)」と呼びます。
この場合、まず薬物療法や放射線治療などを行います。
 
しかし、最初に「手術が難しい」と判断されたことだけで、その後の手術の可能性がすべて決まるわけではありません。治療がどの程度効いているか、画像がどのように変化したか、腫瘍マーカーがどのように変化したかなどを継続して評価します。
その結果、一部の患者さんでは手術が新たな治療の選択肢となることがあります。
 
→ 「切除不能・局所進行膵がん(UR-LA)」と言われた方へ
 
 
8.肝臓や肺、腹膜などへの転移がある場合
 
膵がんが肝臓、肺、腹膜など、膵臓から離れた場所に転移している場合を「切除不能・遠隔転移を認める膵癌(UR-M)」と呼びます。
この場合には、薬物療法を中心とした全身の治療を行います。
患者さんの体の状態や、必要に応じて行う遺伝子検査などの結果も考慮しながら治療方法を検討します。
 
 切除不能・遠隔転移を認める膵癌(UR-M)」と言われた方へ
 
 
9.画像だけではなく、「がんの性質」も考えます
 
膵がんの治療方針を考えるためには、CTなどで「がんがどこまで広がっているか」を見ることが重要です。しかし、それだけでは十分ではありません。
 
広島大学病院では、
画像でみた、がんの広がり
CA19-9やDUPAN-2などの腫瘍マーカー
患者さんの体の状態
薬物療法を行った場合には、治療がどの程度効いているか
 
などを総合して治療方針を考えます。
 
→広島大学病院の膵癌治療方針の考え方
 
 

ご自身やご家族の治療方針について相談したい方へ

膵がんの治療方針は、ステージや切除可能性だけでなく、がんの性質や治療への反応、患者さんの全身状態などを総合して検討することが重要です。

「手術ができると言われた」「手術は難しいと言われた」いずれの場合でも、治療方針について迷われている方はご相談ください。

→[セカンドオピニオンについて] 

→[受診・紹介について]

 

膵がん診療担当

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上村 健一郎

広島大学病院 消化器外科 診療教授
日本肝胆膵外科学会 高度技能指導医/日本消化器外科学会 指導医
専門:膵がん、高難度膵切除手術、抗がん剤治療、集学的治療、ロボット支援下手術