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【肝胆膵外科】膵胆道癌に対する周術期化学療法

 

1.背景

 当教室で長年にわたって施行しているGemcitabine(ゲムシタビン)+S-1(TS-1)併用療法による膵癌に対する手術後補助化学療法において、5-FU効果発現関連酵素である, Dihydropyrimidine Dehydrogenase(DPD)の腫瘍内発現解析を行っている。Gemcitabineを細胞内へ輸送するtransporterのうちの主要な役割を果たすHuman Equilibrative Nucleoside Transporter 1(hENT1)の発現が低いgroupにおいて、予後不良であることが報告されている。本研究の目的は、膵癌に対する術後補助療法としてのGemcitabine(ゲムシタビン)+S-1(TS-1)併用療法において、hENT1およびDPDが効果予測マーカーとしての役割を果たすかどうか、また、「個別化治療」に向けた、抗癌剤選択の有用なマーカーになりうるかどうかを調べることである。

 

 

2.対象と方法

 2002年1月から2010年3月の間に、広島大学にて治癒切除を目的として膵切除を受け、手術後補助化学療法として、Gemcitabine(ゲムシタビン)+S-1(TS-1)併用療法を受けた86名の患者を対象とした。

統計学的検討に関しては、以下の3段階により検討した。

 

  • 対象患者の臨床病理学的因子とDPDおよびhENT1の発現の相関関係について検討する。
  • 臨床病理学的因子およびDPD発現・hENT1発現とDisease Free Survival (DFS)およびOverall Survival (OS)との関係を単変量解析にて行い、有意差のあった因子に関して多変量解析を行う。
  • DPDとhENT1を組み合わせた分類を導入し、この分類とDFS およびOSとの関係を単変量・多変量解析にて調べる。

 

 

3.結果

 対象となった86名のうち、高発現DPD(High DPD)を35 (41%) 名、高発現hENT1(High hENT1)を 63 (73%)名に認めた。

 

DPD_hENT_Kondo.JPGImmunohistochemical analysis of DPD and hENT1 expression in pancreatic carcinoma.  (A) Pancreatic carcinoma with high DPD expression; note the strong cytoplasmic staining, and (B) low DPD expression, whereas adjacent islet cells (arrow) demonstrate staining and provide a positive internal control.  (C) High hENT1 expression, which strongly stains the plasma membrane, and (D) low hENT1 expression, whereas adjacent islet cells (arrow) demonstrate staining and provide a positive internal control.

 

 

1)対象患者の臨床病理学的因子とDPDおよびhENT1の発現の相関関係については、DPD発現およびhENT1発現は、他の臨床病理学的因子と統計学的に有意な相関を示さなかった。

2)臨床病理学的因子およびDPD発現・hENT1発現とDisease Free Survival およびOverall Survivalとの関係については、R factor, T factor, N factor, DPD, hENT1の因子がDFSおよびOSと統計学的に有意な予後因子であった。

3)これらの有意差を示した因子について、多変量解析を行った。その結果、DPDおよびhENT1発現は、DFSおよびOSの両方において独立した予後因子であった。

4)DPDおよびhENT1ともに独立した予後因子であったので、これらを組み合わせた、Combined DPD/hENT1分類を導入した。定義は以下の通りである。

 

Combined DPD/hENT1分類

 2 Favorable Factors:Low DPD and High hENT1発現

 1 Favorable Factor:Low DPD and Low hENT1 or High DPD and High hENT1発現

 0 Favorable Factors:High DPD and Low hENT1発現

 

この分類と、DFSおよびOSとの関係について単変量解析を行ったところ、DFSおよびOSとも有意差を認めた。

  

  DFS_Kondo.JPG

OS_Kondo.JPG

 

4.結論

DPDおよびhENT1の腫瘍内発現は、Gemcitabine(ゲムシタビン)+S-1(TS-1)併用術後補助化学療法において、有用な抗腫瘍効果の予測因子であった。また、今後の個別化治療に向けた重要な予測因子になりうると考えられる。