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【大腸肛門外科】潰瘍性大腸炎

 

はじめに

 

 広島大学第一外科では、1985年以来炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病など)の外科治療に取り組んできました。

 当科は中国・四国地方で炎症性腸疾患の手術治療を行う数少ない専門施設であり、中国地方を中心に広い地域より患者さんが受診されています。

 潰瘍性大腸炎の手術数は年間10-20例、累積で250例以上行っています。

 様々な診療科が集まる大学病院の特徴を生かし、炎症性腸疾患を専門とする内科医だけでなく、その他併存する様々な疾患に対しても各専門領域のスタッフと連携した治療を行っています。

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どんなときに手術になるのか?

 

 潰瘍性大腸炎に対する外科手術治療は、以下の場合に行います。

 ① 様々な内科的な治療を行っても病状のコントロールが難しい

 ② 大腸粘膜病変に癌がみつかっ

 ③ ステロイドを必要としない生活を送るため

 などの理由で一緒に治療してこられた主治医より大腸全摘手術をすすめられた方が受診されています.

 

 手術を受けられる患者さんや,ご家族からは以下のような質問をよく受けます。

  ・手術ってどんなことをするのか?

  ・治療にかかる期間はどの程度なのか?

  ・手術で大腸を全部とった後、身体の状態や生活はどうなるのか?

 ここでは,上記の内容について詳しく説明していきます。

 

 

【手術治療について】手術ってどんなことをするの? 

 

 潰瘍性大腸炎の手術治療では、炎症の母地となる大腸を全て取り除きます(大腸全摘術)。

 そして小腸の断端を15cm程折り返して袋を作ります。これを回腸嚢(かいちょうのう)といい、術後便を貯める機能を持たせ、この回腸嚢と肛門を吻合して肛門から排便できるようにします。

 

 現在行われている標準術式には、回腸嚢肛門吻合術(IAA; Ileoanal anastomosis) と 回腸嚢肛門管吻合(IACA; Ileoanal canal anastomosis)の2つの方法あります。

 IAAIACAの違いは“肛門管部分の直腸粘膜”を切除するかどうかです。IAAは肛門ぎりぎりのところ(歯状線といわれる粘膜と皮膚との境界)から肛門を締めるための筋肉(肛門括約筋)を残して表面にある大腸の粘膜を全て取り除く方法です。大腸の粘膜を完全に切除するので手術後は潰瘍性大腸炎による炎症や癌化の心配がなくなります。しかし、IACAに比べると、術後に便が少量漏れて下着にシミがつくこと(漏便)が起きやすいといわれています。当科では病変となりうる粘膜を全て取り除くIAAを行っています.

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手術スケジュール】治療にかかる期間はどのくらい?

 

 潰瘍性大腸炎の手術は、通常2回に分けて行います。

 1回目の手術は大腸を全部切除し、小腸の末端を折り曲げて作製した袋(回腸嚢)を肛門とつなぎます。同時に口側の小腸で一時的な人工肛門を作ります。人工肛門をおく理由は、脆弱な回腸嚢と肛門とのつなぎ目が完全に癒合するまで、便が吻合部を通過しないようにして吻合部を保護するためです。

 順調にいくと術後2週間くらいで一旦退院できます。約1ヶ月半以降にこの人工肛門を閉じる手術を行って2期分割手術が終了します。ここまでで約2ヶ月間かかり、術後1ヶ月間の療養期間を見込みますと、入院してから社会復帰までに約3ヶ月間を要します。

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 一方,結腸の出血や穿孔を起こしたために緊急手術を行う場合は、原因となる病変を取り除き、且つ全身状態の維持のためにすばやく手術を終わらせる必要があります。そのため、初回手術では骨盤内操作を省いた結腸亜全摘術のみを行う、3回に分わけた手術(3期分割手術)を選択します。この場合、初回手術から2~3ヶ月後に2回目の手術を予定し、さらに1ヶ月半後に3回目の手術となりますので5ヶ月間ほど期間を要します。

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【潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡手術】開腹手術と腹腔鏡手術

 

 以前は、腹部を大きく縦に切って開ける手術が一般的でした。しかし、最近の腹腔鏡手術の手技・道具の進歩に伴い、当科でも潰瘍性大腸炎の大腸全摘術に対して2007年より用手補助下腹腔鏡手術(HALS)を、2014年より完全腹腔鏡下手術を導入しています。

 腹腔鏡手術のメリットは傷が小さく、術後早期の回復も早いことです。デメリットは開腹手術に比べ手術時間が長くなることです。しかし、全例が腹腔鏡手術の適応ではなく、高度肥満例などのリスクがある場合は腹腔鏡手術が困難なケースもあります。

 

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     潰瘍性大腸炎1回目の手術直後の創部           人工肛門閉鎖後の創部

 

 

術後の経過

 

 手術の翌日より離床を始め、2日目(翌々日)には歩行を開始します。

 早いかたでは手術翌日の午後から歩行開始されます。術後の痛みに関しては、硬膜外麻酔と静脈注射を併用した鎮痛剤を投与し積極的に痛みを抑えることで、早い時期から離床が可能になっています。十分な投薬で痛みを抑え、早期に歩行開始することで手術後の回復が早いことが分かっています。

 飲食は手術後2日目に開始し、3日目には食事を開始します。

 

 

退院後の食事

 

 炎症の原因となる大腸を切除しているので,基本的に制限はありません。

 

 

術後の排便

 

 大腸は水様~泥状の便を貯めて水分の吸収を行う臓器です。手術で大腸を切除した後は、便の状態がゆるくなるため、排便回数の増加が問題になります。手術直後は排便回数も頻回ですが、下痢止めを使い排便回数をコントロールしてゆきます(下痢止めが不要な方もおられます)。ある程度の期間がたつと、1日の排便回数が平均7-8回に落ち着いてきます。肛門括約筋を残しており、便意を我慢できるので、手術の前は慌ててトイレに駆け込むことがあっても、術後は常にトイレの位置を気にする必要がなくなります。

 

 術後の漏便に関する患者さんへのアンケート調査では、手術された方の18%(5人に1人くらい)に術後漏便がみられましたが、パッド等を使用することで手術前と同様の生活を送ることができていました。また、ご高齢の方に同様の手術を行っても術後の排便機能は若年者と変わらないとのデータもあり、基本的に年齢による区別なく本術式を行っています。

 

 

妊娠、出産について

 

 潰瘍性大腸炎患者さんの妊娠に関し、低出生体重・発育遅延・帝王切開のリスクは通常の妊娠と差が無いことが知られています.

 また、手術することが妊娠・出産の妨げになるものではありません。通常の経膣的分娩も可能です。

 

 

おわりに

 

 潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患の診断・治療方針の決定は、専門的な知識、技術が必要ですので、治療経験豊富な専門施設を受診することをお勧めします。